教育無償化を手放しに喜んではいけない
教育無償化
3〜5歳の教育無償化を正式に決定 0〜2歳は低所得世帯が対象に - ライブドアニュース
3~5歳児は原則全世帯、0~2歳児は住民税非課税の低所得世帯が対象。
2019年秋から施行される予定。
世帯年収が低い家庭を対象に高等教育にも広げられていく予定です。
一見喜ばしいことに思えますが,課題も山積しています。
逆進性,広がる格差
教育無償化の財源は消費税で賄われる予定です。
消費税は,逆進性のある税金です。
食料衣料住居などの生活に欠かせない費用は,低所得者ほど収入に対する割合が高くなります。つまり消費増税は低所得者ほど税負担が重くなります。
さらに,低所得家庭にはすでに幼児教育の費用に対する軽減措置がとられています。
つまり,教育無償化で低所得家庭が受ける恩恵は少なく,どちらかというと,それなりの年収があるために今まで軽減措置を取られなかった家庭の恩恵が大きいと言えます。
幼稚園・保育園の入園希望者を受け入れることができるか
いわゆる待機児童問題のことも考えなくてはなりません。
共働き世帯の増加により,子どもの数が減っているのに幼稚園,保育園が足りなくなるという事象が起きています。
さらに,保育士の劣悪な労働環境が顕在化し,なり手が不足していて,保育園や幼稚園を創設したくてもできない状況にあります。
問題はそれだけでありません。
待機児童数には,入園を申し込んでいたのに待機児童数として数えられない隠れ待機児童が含まれていません。
さらに,いろいろな事情からそもそも入園を申し込んでいない世帯が一定数あるはずです。
教育無償化になったとき,今よりさらに待機児童問題が深刻化する可能性があります。
世代間格差の拡大
今の40代から50代の,そろそろ子ども自立してきた世代は,多額の教育費を負担しています。
1965年の年間授業料は国立で年間3万6000円,私立で18万3000円ほどでした。
しかし,2004年には授業料は国立で52万円,私立で82万円となっています。
学部4年間だけでも国立で200万円,私立で300万円ほど,今の30代世代の高等教育を受けた世代は多くの授業料を払っているわけです。
当然当時の学生にすべては払えず, 親である40~50代世代に一部負担してもらったり,奨学金という名の学生ローンを自身が背負って社会に出ています。
近年,この奨学金を返済できない問題が深刻となっています。
日本社会の不況により,十分な収入が得られない20~30代が多数いるのです。
世代で見ると,この20~30代は,自身の学生の時の学費を返済しながら,消費税という形で次世代の学費を負担する形となります。
自身の子の教育費のために十分な貯蓄のない40~50代が高齢者となった時に一斉に貧困に陥る可能性があります。
自身の奨学金が重くのしかかる20~30代は,貧困のために結婚や家庭をもてる世帯がますます減るでしょう。